『論文・レポートにおける参考文献の書き方』【大学生 知的生活の一歩01】

学業・遊び

 今回は、二つの視点から解説してみたいと思う。
 一つは「参考文献の定義」。
 どのようなものが参考文献と言えるか。文献リストに書く・書かないの判断の仕方について。
 もう一つは、「参考文献のリスト化の仕方」。
 掲示する順番や書くべき情報などについて。

 私は卒論の参考文献について「直接引用して無くても目を通したものは全て文献リストに挙げろ」と指導されました。これには幾つか理由が考えられます。
 人の記憶は曖昧で、自分の考えと思っても実は昔どこかで読んだネタだったということも有り得る。とりあえず挙げておけば似たような記述があっても「パクリ(剽窃)」の謗りは免れるでしょう。
 また学者はプライドが高く派閥があったりもします。類似の研究者の論文や書籍が挙げられていて自分のものが挙げられていなければ、意図的に外したのかと勘ぐられることもあります。そこまで穿った見方をされなかったとしても、先行研究の調べ方が不十分だとは言われるでしょう。

「参考文献」の定義

【参考】とは、
①自分の考えをまとめるため、種々の資料などを利用し、考えること。
②学習や研究などのために、教科書以外の書物や他人の著作物を見ること。(『大辞林』一〇〇四頁)

【文献】とは、
①昔の制度や文物を知る資料となる記録。
②参考となる書物や文書。(『大辞林』二一六〇頁)

 以上を踏まえると、「考えの元ネタになった資料」、「読んだ本や文書類」が該当する。
 つまり、直接引用しなかったとしても目を通したものは参考文献の可能性がある。
 自分の主張に全くかすりもしないなら良いが、過去に何かで読んだ記憶(誰かの主張)が自分のオリジナルの発想だと思い込む可能性もある。なので、目を通したことのある関連書籍はなるべく幅広く拾っておくのが良い。
 ただ一般的には冗長になるのを避けて、「主要参考文献」という表記で絞り込むことが多い。
 もう一つ重要なのは、文書も含まれるという点。PDFの論文や無料で配布されているリーフレットのようなもの、そしてウェブサイトのページも「文字による著作物」です。

「研究文献」とは

 研究文献というのは、各研究についての記述がある文献。
 したがって、これらの研究文献の中から「主要参考文献」が決まってくるとも言えるし、「参考文献」の中に研究文献も含まれているとも言える。
 そして数ある研究文献の中に「基本文献」と呼ばれるものがある。これは最低限読んでおくべき本といった意味で、例えばシラバスに記載されてるものはその講義を受講する上での「基本文献」。(但し時代や教師により「基本文献」は異なる)

参考文献の書き方

 「まとめ型(総記型)」と「個別型(注記型)」の二通りがある。
 レポートはどちらか一方でも構わないだろう(但し、指定の様式がある場合はそれに合せる)。論文は両方併記が通例。
 「註(注)」とは本文の補足的な内容で、本文に含めると煩雑になるものを文末に別記したもの。特定の記述に対し参考・引用した文献を明示したい時にも用いる。
 学生の一般的な小論文やレポートの場合は、そこまで細かい指定はあまりないかと思うが、教授や団体によっては「個別の様式」を定めているケースもある。

 

まとめ型(総記型)とは

 とにかく目を通したものを羅列するだけ。
例えば、

【参考文献】
著者名『書名』(出版社/発行年)
著者名『書名』(出版社/発行年)
著者名『書名』(出版社/発行年)
著者名「論題」―『掲載誌』(発行元/発行年)

といった感じです。
 本格的な論文や卒業論文となると、参考文献の量も多くなります。
 その場合には次のような分類でリスト化するのがお薦めです。
論文、書籍、事典など資料の種類で分ける
著者の50音順に記載する。
発行された年の順にする。
 全部適用する必要はないですが、どれか一つ適用すると自分でも確認がし易いかと思います。特に論文は先行研究を踏まえて書くものなので、③の形式は先行研究の把握にも便利です。

 

個別型(注記型)とは

 文献を参照して書いた箇所に番号(註)を付けて関連性を明示するやり方です。
例えば、

本  文「~といった指摘もあるが(1)、否定する意見もある(2)。」

(1)著者名『書名』(出版社/発行年)○頁
(2)著者名「論題」―『掲載誌』(発行元/発行年)○頁

といった感じです。
 ここでは本文中の(1)の「指摘」は誰が・いつ・何処で(どの文献で)しているか。(2)の「否定的見解」は誰が・いつ・何処でしているかを、註でそれぞれ示しています。
 重要なのは読み手が判るという点なので、書き方はある程度自由で良い。(文書作成ソフトが『Word』か『一太郎』かでも仕様(註の機能)が異なります。)
 記事冒頭の注意点で示したように、指示があれば従う必要がありますが、無い場合は基本自由です。

 卒論レベルになると、参考文献としての有効性はより厳しく審査されますが、一般的な小論文やレポートの場合は、そこまで気にせずとも良い。
 重要なのは、自分の意見・考えと、そうでない部分とをはっきり区別すること読んだ人が文献の確認を出来ることです。そのために必要な情報は、誰が書いたかと、いつ発行(公表)されたかです。

註と参考文献

「註(注)」は本文の中に補足的に付けるもので、自他の主張の根拠や引用文で主に使います。
「参考文献」は既に説明した如く、執筆に当って目を通した資料全てです。
「主要参考文献」は参考文献の中から特に自分の論述のヒントになったもの、実際に引用したもの。

表記のポイント

 縦書き・横書き、学部・組織・媒体によっても違います。以下一例を示す。

 著者名の末尾に「著」、「稿」、「編」・「監修」をつける場合もある。「著」は書籍。「稿」は論文等の原稿。「編」・「監修」は複数人や組織による編纂物の場合。

 「ページ」は漢数字のほか、「p.44」「pp.44-45」といった表記もある。(主に横書き)

 原典が別にあるものは原典も表記する。

『Einführung in die Phänomenologie der Religion』Gerardus van der
Leeuw(1961) 『宗教現象学入門』G・ファン・デル・レーウ著 田丸徳善/大竹みよ子訳 東京大学出版会(1979)

 

【書籍の場合】

著者名書名』(出版社発行年

 以上の五項目。先頭は著者名、末尾はページ。その他の記載順は流動的。
 再版などで版が改められているものは第何版か示し、初出の刊行年も記す。

【論文の場合】

著者名論題」―『掲載誌』(発行元発行年

 以上の六項目。先頭は著者名、末尾はページ。その他の記載順は流動的。『掲載誌』の後に「所収」などと書く例もある。

まとめ

 参考文献とは、執筆に際して目を通した資料(文字による著作物)である。
 掲載に必要な情報と形式は以下の如くである。

①書籍の場合:著者名『書名』(発行所/発行年)。引用の場合は頁数も示す。
②論文の場合:著者名「論文名」―『掲載誌』(発行所/発行年)。
③Web記事の場合:著者名「ページ名」―『サイト名』(運営機関/閲覧年月)。もしくは、運営機関『サイト名』(アドレス)閲覧年月。

 なお、アドレスの一部に日本語が含まれて居る場合、コピペすると日本語部分が別の記号に変換されるので修正する。また、紙に印字されたアドレスはあまりに複雑で長いと確認が困難なため注意する。

ヒント
 担当の先生が論文を出されてる場合は、その書式を真似ると良い。

参考文献の増やし方

 それぞれの学問分野で「基本文献」と言われるものが必ず一つ二つあります。それらの参考文献をみて、自分の研究テーマと関連しつつ自分が未読のものを撰びます。その未読文献の参考文献をまた撰ぶ。これを繰り返すと先行研究を辿ることにもなります。但し、「焼き直し」とか「先行研究の羅列」では大した評価はされません。
 既に研究され尽くしてると思えるテーマでも、見方を変えれば切り口は見つかるぞ。

参考文献の優先順位―どれから読むべきか―

 刊行年の新しいものを優先。但し、基礎文献と著者に注意。
 諸研究は先行研究を踏まえつつ進展していくという前提があるため、また増補改訂版が出て居る可能性もあるため、新しいものから読む。
 しかし新しければ何でも良いというわけでもない。学会や派閥、教団など著作者の所属機関によって、同様のテーマでも研究の手法や視点に大きな違いがある。
 その辺りの妥当性を判定するのに役立つのが「基礎文献」。例えば仏教の経典や論書の引用は『大正大蔵経』を使うのが定番というか暗黙のルールになっている。(国際標準典拠。一応データベイス化されてWeb上にも公開されている)。それに対し私などはもっと気軽で(訓読があって)身近で安価な經本を使って居るので、「ああこの人は専門機関に所属する学者じゃないんだろうな」ということが推察されるというわけです。あるいは自分が所属している教団や組織が発行してる本ばかり使って居ると「あまり客観的じゃなさそうだな」と思われたりしがちですね。
 「定番」が何故重要かというと、客観性を示す意味があるから。また第三者(学者)が確認しやすいから。したがって、学部生の場合はシラバス(各講師)が指定する図書を使えば充分でしょう。
 図書館にも無いようなマイナー過ぎるものも極力避けたい。(但し先行研究史には含めたほうが良い)

論文は二種類ある

 基本は公開の前に第三者が内容をチェックしている「査読論文」。これは組織によって公刊されている研究誌や紀要の募集要項などで確認できる。
 未査読のものや自費出版の書物などに掲載の論文は、少し扱いに注意を要する。その見極めも「参考文献」が役に立つ。