瀧尾神社(京都市東山区)【貴船龍神関連社】

神社

読み方:たきお-じんじゃ

【由 緒】
創建年不詳。
主祭神は大己貴命。
大黒天(大國主命)、弁財天、毘沙門天も合祀されている。
 洛東聾ノ谷にあった武鵜社(たけうのやしろ)が応仁の乱で焼失、日吉坂に移転し多景社と称した。
 天正十四年(1586)十月、秀吉の方広寺大仏殿建立に伴い、現在地へ遷座。
 同区の泉涌寺(真言宗泉涌寺派総本山)と関係が深いと言われる。(参考:京都市設置境内案内板)

 泉涌寺の前身は空海が結んだ庵であったが、十三世紀初頭に俊芿(しゅんじょう)が伽藍を整備建立した際に清水が湧き出たため「泉涌寺」と改称した経緯がある。
 この「涸れない清水の涌出」伝承は神泉苑も持っており、真言宗と結びついて居る。空海と清水に纏わる伝説の淵源はこの辺りにありそうですね。


狛犬

 宝永年間(1704-1711)瀧尾神社と改称。
 京の豪商下村家(大丸の創業者)は当社への崇敬篤く元文三年(1738)以降、数度に亘り社殿修復を行う。
 現社殿も天保十年(1839)から同十一年にかけて下村家のバックアップで造営された。
 本殿は「北山貴船(貴船神社)奥院」の旧殿を移築(一部改築)したといい、社殿群(本殿、拝殿、手水舎、絵馬舎など八棟)が京都市の有形文化財に指定(昭和59年)
 拝殿天井部の龍彫刻は京の彫師九山新太郎の作で全長八メートルに及ぶ。(参考:京都市設置境内案内板)

 髙龗神こそ居ないが、貴船神社の奥宮とは建築を介した繋がりがあり、鴨川の沿岸に鎮座し、大己貴命や弁財天など龍とのシナジーがある重要な神社
 それを物語るように拝殿に大型の龍像があり、絵馬も龍モチーフのものがある。
 拝殿の龍は立体的な像を丸ごと吊り下げて設置しているのが珍しく、天井画や板彫りの龍などとは違った趣がある。
 もう一つ毘沙門天も京都では鞍馬寺と関係が深く、その鞍馬寺の建立に貴布禰明神が関わっているとされるので、やはり両社の関係は浅からぬようである。

 


拝殿の龍


手水龍

 


末社(左から愛宕神社、稲荷社、金刀比羅宮、瀧尾天満宮)

 

<絵馬(うなぎ)>

紋は「折敷に三文字」
 これは末社の三島神社の紋でしょう。うなぎは三嶋大社の神使。
 同じ東山区にも三嶋神社があって、こちらは安産・子宝で有名だそうです。ご祭神の中に木之花咲耶姫がいらっしゃるのが注目されますね。(『神社のどうぶつ図鑑』)
 瀧尾神社の御朱印をお願いした時に、こちらの御朱印も聞かれたので、末社でありながら絵馬と御朱印が揃っていて信仰の高さをうかがわせます。

絵馬(龍)

 鳥居は実物と異なる朱色だが、形状はほぼ同じ。神額には「瀧尾宮」とある。
 龍の形象は拝殿の彫刻と同型であるが、どちらをモデルとしたかは不明。
 鳥居の上部に居並ぶのは祭神からして毘沙門天、辨財天、大黒天であろう。
 鳥居の前で正座し畏まる裃の人物。羽織の背の文字は「福」であろうか。

 

鎮座地:京都市東山区本町11-718
(最寄り駅:京阪本線/奈良線「東福寺」)
御朱印:あり

(参考:境内案内板、『真言密教の本』、『神社のどうぶつ図鑑』)