多加意加美神社(庄原市口和町)【広島県の龍神祭祀社】運気が高まる光の龍

参拝の記録・記憶

よみ:たかおかみ-じんじゃ
別称:八国見大明神

鎮座座標庄原市口和町向泉 しょうばらし くちわちょう むこういずみ
(口和役場のある通り。庄原ICから35分)

 


何気なく撮った社叢に黄龍が写っていた!
(現地では気づかず。あそこを撮りたいと思って撮った一枚)

【由 緒】
『延喜式』神名帳の備後国恵蘇郡の多加意加美神社に比定される。
口和町宮内の八国見山に鎮座していたが、大永年間(1521-1528)に口和町向泉の寶蘇山に遷座。
寛永九年(1632)向泉の木原に遷座。(口碑)
中世以降衰微し社号も変わっていたが、文化年間(1804-1818)、賴杏坪が旧称に復す。
明治44年、八幡神社、日枝神社を合祀。
(この八幡は建久六年(1195)に宇佐八幡より勧請とのこと)
大正3年、現在地へ遷座。

例祭:10/30(元10/17)
御田植え神事:4/20

【祭 神】
高龗神(たかおかみ-の-かみ)

[相殿]
品陀和気命
息長帶比売命
大山祇命


脇参道鳥居・蛇形の注連縄(2023)

 

多加意加美神社社叢は庄原市天然記念物(S60指定)
椙27本、樫、樅数本の巨木で構成。
樹齢推定250年

 


鎮座地を転々とし八幡神なども合祀されているが、小丘の広い境内はよく整備され見張らしもよい。
雲気も上々でいい風が吹き、上空は西から東へ。先ほどの光龍の余韻があった。

 

本殿(庄原市指定重要文化財 H2指定)
十九世紀建立の一間社 入母屋造り・銅板葺

延喜式内社であったが所在不明となる。

木造獅子狛犬、随身像(町指定文化財)
本殿内陣に獅子狛犬7体、随身像8体
室町~江戸期の各時代のもの
(外から見ることはできない)


神紋は井桁に髙字(過去年撮影分)

 


狛犬(過去年撮影分)

末社・天満宮

【参考】
『廣島縣神社誌』
境内案内板

 

オカミの神について
 「多加意加美」という表記は独特で、タカオカミ自体は『日本書紀』のみに登場する。類似の表記に「意加美」「多加上」が確認できる。(いづれも髙龗祭祀社)
『古事記』では以下の二種類が見られ同一とされる。
闇淤加美神」(クラオカミ)
イザナギが火の神カグツチを斬り殺した刀から流れる血より生じた神々の一柱。
淤加美神
布波能母遅久奴須奴神(スサノヲとオオヤマツミの系譜)と婚姻する日河比賣の親。
『日本書紀』では以下の二種類が見られ、記述内容から同一神と見做される。
闇龗」 45(「巻第一神代上 第五段 一書第六」)
イザナギが火の神カグツチを斬り殺した刀から流れる血より生じた神々の一柱。
髙龗」 51(「巻第一神代上 第五段 一書第七」)
イザナギがカグツチを三段に斬った時に生じた三柱(雷神・大山祇神・髙龗)のうちの一柱。

 
「オカミ」は龍神であるが、字義的には雨をもたらす雲龍。
「闇」はくらいこと。雨雲・黒雲。閉塞、包囲。
「髙」はたかいこと。高所の龍。立ち昇る、威圧、大音(神鳴り=雷)。
ただ「闇」には愚かの意もあり、「髙」には優れの意もあるので、同一視には疑問もある。

 
 カグツチはイザナギの子の一人だが、その出生がイザナミの死に直結し系譜が転換する重要な神。
 「剣」は氏族を象徴する神器の一つ。被支配者の剣は支配者に所有権が遷る。
 カグツチは火の神と語られることが多いが、イザナギの剣(イザナギ配下の氏族)とカグツチ(の氏族)との絡みから水系の神が多く出て居る点が注意される。同時にイザナミはイザナギとの婚約を解消し黄泉国の住人となり、その後イザナギの禊(水を媒介)で三貴子誕生という流れである。(→再び火(日)の系譜を重視する展開に作為がある。海(水)担当は元来は龍蛇神であったが、スサノオに挿げ替えて、大蛇(惡神)を斃し剣を奪う話にしてある)『古事記』ではこの辺りの記述と出生数が合わないなど作為のあることを匂わせている。