映画『君たちはどう生きるか』(初見感想)

はじめに
φ事前情報なしで行きました。
φタイトルを拝借した本が実在するらしいですが、未読です。
φ監督や作品の熱烈なファン・研究者・評論家ではありません。(観たことあるのはラピュタ、トトロ、魔女宅、もののけ、千と千尋、ポニョ)
φ個人的な解釈・見解です。(うろ覚えの記憶を含みます)

1「ネタバレなしの感想」と、2「ネタバレありの考察(視聴映像のみ)」と、3「ネタバレありの考察(パンフレットで補足)」の三種類を公開予定です。

作品の世界観や観方について若干触れる箇所があるので、情報をまったく知りたくない人は次の四行だけ読んでブラウザバックしてください

 筆者は「ライト・オーディエンス(ジブリの熱狂的なファンではなく、映画自体も年に数本程度しか観ない)」の部類であるが、純粋にこの作品は楽しめた。
 上に挙げた宮﨑監督の作品と似てる雰囲気のものは無い。
 事前情報を出さなかった理由は、おそらく作品のコンセプトと関係している。

以上です。

 

1:ほぼネタバレなしの感想

 この作品は事前情報がほとんど無いことでも話題となった。これについては監督が決めた措置ではなかったと聞いている。
 筆者(さすらい)は基本的に、中身がよく判らない・確認ができないもの(例えば封印された雑誌や試聴できない音楽)にお金を出さない主義ですが、作品のコンセプトを考慮しての決定だったとすれば、映画を見終わった今、この措置は例外的に「あり」だったと言える。

 映画の情報サイトで上映情報を調べる時に、大まかな評価が自然と目に入ったのだが、eiga.comでは八月末の時点で5点満点中「3.5」という評価で、あまり高くないようである。
 ネタバレしてない感想を少しばかり流し読みしてみると、評論家?の評価は軒並み高く、一般の視聴者は賛否両論のようであった。また公開初日の報道で出待ちインタビューを受けてた人たちの感想として「よく判らない」といったニュアンスのものがあったことを記憶している。

 ただこれらの評価も、監督の熱心なファンなのか、単に映画ファンなのか、それとも話題性のあるものに飛びついてるだけの人たちなのかといった、視聴者の属性が不明なので、さほど気にする必要はないように思う(自分がどう向き合うかのほうが大事)。また「はじめに」で述べたように、筆者は「ライト・オーディエンス」の部類であるが、純粋にこの作品は楽しめたからである。

 筆者には「よく判らない」という箇所はほとんど無かった。何故ならその場で「霊的に解釈」していたからである。(霊的な解釈というのは、インスピレイションすなわち直観的なという意味である)

 そうした自分の解釈に則れば、「よく判らない」という感想があることもまた何となく理解できる。というのも、作中の物語自体に、特に意味は無いように思えたからである。この作品は、映像によって「世界」を見せることが目的なのではないかと感じたからである。
 したがって、物語(ストーリー)にテーマを見出そうとするような観方をしていると結局何が言いたいのか「よく判らない」、タイトルとどう結びつくのか「よく判らない」「はっきり説教してほしかった」などという評価になりそうな気がする。
 物語に重点があるなら、別に映像にする(こだわる)必要はないだろう。
 監督は原作・脚本も担当されているが、アニメーションの監督である以上、映像で語る(見せる)方が主体と観るべきではなかろうか。

 描かれる「世界」を素直に受け止められるかどうか。ここが評価の分かれ目のような気がします。
 「謎」に囚われてしまうと、この作品の狙いから外れてしまう。例えば鳥が複数出て来ますが、一つの鳥だけ視ててもたぶんダメだと思う。文字通り、俯瞰する必要がある。そうすると、描かれていないものが観えてくる。・・・かも知れない。
 なぜこんな曖昧な言い方かといえば、人によって違うからです。そしてそれこそが、「作中の物語自体に特に意味は無いのでは?」と筆者が言う理由です。もし明確なテーマやストーリーがあれば「よく判らない」などといった評価は出て来ないでしょう。

 けれども、理解できないなら理解できなくても良くて、その「理解できない」ということに実は意味があったりする。
 ただそのことを客観視しないと、監督がこれを提示する意味や事前情報を伏せた意味がうまく掴めないのかなと思う。事前情報を発表しないということは、説明的なことを言いたくない、すなわち登場人物の物語(視点)に囚われないで観て欲しいということの表れでしょう。つまり、カメラが捉える映像から何を感じるかが最も重要視されているということでしょう。そういう意味では「よく判らない」というのも立派な感想だと思います。

 最後に蛇足ですが、『すずめの戸締まり』を意識されたかなと解釈することもできる描写がちらほら見受けられました(個人的な憶測です)。あんまり言うと考察になってしまうのでここらで止めますが、神話的な要素を『すずめ~』は現代人の視点で「みる」のに対し、『君たち~』は物語世界の時間軸で「みせられる」
 後者の場合、「現代人」である観客の意識は果してどうなるのか・・・。ここもまた「なーほーね」と「よく解らん」の分かれ目かと思いました。

 「君たちはどう生きるか」というある種の哲学的な問いに、少しでも向き合おうとする人、そして若い人ほど観てほしいと思います。

 

【まとめ】
 φ「ライト・オーディエンス」でも面白かった。(ここでいう「面白さ」はゲラゲラ笑う意味では無く、非常に興味深い内容という意味)
 φ小さい子にはちょっと難しいかもしれないが、おじいちゃんと行くと話が弾むかもしれない。
 φ従来作品を象徴するような女の子(少女ヒロイン)要素は少ない。
 φ現実世界にファンタジックな要素が出て来るが、そのこと自体に意味があるわけではない。(仮説)

 細かい考察は近日公開の予定です。